「そこまでやる!?」「意外!」
物語を活用した成功事例その1
~コンテンツマーケティングとストーリー<3>~
企業や店舗、商品、あるいは人のファン化を促す「ストーリーを用いたコンテンツマーケティング」。ストーリーというエッセンスを加えることで、コンテンツをただの「情報」として提供するだけでなく、ユーザーに「体験(共感)」という価値の提供が可能になります。
連載コラム「コンテンツマーケティングとストーリー」第3回では、実際に多くの反響を得て成功を収めた「ストーリーを用いたコンテンツマーケティング」の事例を、その活用法に注目しながら、2点ご紹介していきます。
事例1.企業の「技術」をストーリー化~前田建設~
前田建設は、元請け業者として土木・建築を請け負い、施工を行う準大手ゼネコンの1社です。この前田建設が展開しているコンテンツマーケティングが「前田建設ファンタジー営業部」のWebサイト。
「ファンタジー営業部」は、ゼネコンの業務内容の周知と、一般消費者が「ゼネコン」という言葉から連想するネガティブなイメージを払拭するという目的で始まった組織・活動です。
このサイトでは、大規模工事の管理を、着工から竣工まで取りまとめる「ゼネコン」ならではの面白いコンテンツを提供しています。具体的にやっていることは、「SF・アニメ作品に登場する施設を実際に建設するとしたら」と仮定して、概算の工事費・工期を算出するというもの。
そのプロジェクトが会議によって進捗していく様子を連載という形式で紹介しています。
「強みの訴求」と「ブランディング」を両立
写真は、「ドライブシミュレーターゲーム『グランツーリスモ』シリーズのとあるレースコースを再現するとしたら」という企画の会議の様子です。
レースコースやコース内のトンネルといった建設においては、想定立地やその土地の地質を調べたうえで計画を立案。さらに、上記のようにコース内に作る汚水処理施設やごみ焼却施設などの建設までもシミュレーションしていくという徹底ぶりです。
これぞまさに、ゼネコンにしかできない“遊び”と言えます。そして、以下のような具合に、個別の詳細な調査と想定のもと見積もりをしていきます。
この工事に対して「ファンタジー営業部」がどのような見積もりを出したかは、実際にサイトを見てご確認いただければと思いますが、この企画がコンテンツマーケティングとしてすぐれているところは、自社の強みを前面にアピールしながら、それをエンターテインメントに仕上げている点。
そして、少しずつプロジェクトを進捗させていくことで企画にストーリー性を加え、ユーザーに期待感を持たせている点です。
顧客の信頼獲得と企業のブランディング、双方にメリットを生み出した好例と言えるでしょう。
事例2.ユーザーと商品との“出会い”をストーリー化~バーバリー~
イギリスを代表するファッションブランド「バーバリー」が展開するコンテンツマーケティングが「Art of the Trench(アート・オブ・ザ・トレンチ)」です。
2009年に開設され、公開後8ヶ月で約700万PVを獲得したこのサイトは、5年経った今でも好評を得ています。
このサイトでは、自社の主力商品のひとつ「トレンチコート」に焦点を当てた企画を展開。ユーザーから、トレンチコートをモチーフにしたコーディネート写真を投稿してもらい、それによるフォト・コレクションを構築しています。
商品とユーザー、ユーザー同士のコミュニケーションを促進
この事例で注目すべきは、ユーザーと商品の間に生まれる「出会い」というストーリーに着目している点でしょう。
洋服は、それだけではただの「もの」に過ぎませんが、誰かの手に渡ることで、そのユーザーにとっての「表現」になり、ときにはユーザーの「アイデンティティ」にもなり得ます。そして、「人」「もの」「土地」「時間」がひとつに交わることで、そこには必ずストーリーが生まれます。その、世界中で生まれる「小さなストーリー」を集めたのがこのサイトというわけです。
同じ興味を持つユーザー同士が、お互いの「ストーリー」を写真をとおして共有しあうことで、コミュニケーションを促進し、話題の拡散を図っています。また、サイトに投稿するユーザーは、すでにバーバリーの「顧客」となっている人たちですが、ファッションが持つ「自己主張」「周囲からの共感の獲得」という価値を最大化することで、ユーザーとのより強い絆を築くことにも成功しています。
こちらは、コンテンツにストーリーを加えるというよりは、自社が持つコンテンツ(この場合洋服)が内包するストーリーを顕在化する場を作った、という事例として秀逸です。
ストーリーの捉え方はいろいろ
今回は2つの事例をご紹介しました。それぞれ、コンテンツマーケティングに「ストーリー」のエッセンスを採り入れた企画でしたが、その捉え方はまったく別のもの。今後さらに拡大していくコンテンツマーケティング市場においては、一層こうした「切り口のユニークさ」が求められます。
何を軸にして「ストーリー」を語ったり感じさせたりするか――こうしたことが、今後の大きな課題になっていくでしょう。
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