「共感」「体験」でユーザーをファン化――
物語を活用した成功事例その2
~コンテンツマーケティングとストーリー<4>~
前回の連載コラム「コンテンツマーケティングとストーリー」では、ユニークな形でコンテンツマーケティングにストーリーのエッセンスを加えた事例をご紹介しました。今回は、コンテンツにさらに強くストーリーの要素を織り交ぜ、「共感」「体験」を促している事例をご紹介していきます。
1.ハロー!パソコン教室「東京エクセル物語(ストーリー)」
最初にご紹介するのは、「ハロー!パソコン教室」が展開する「東京エクセル物語(ストーリー)~私の心の中の関数~」。トレンディドラマ(死語)や映画のサイトのようなメインビジュアルが非常に特徴的です。しかしもちろん、ドラマや映画のサイトではありません。その実態は、パソコン教室が贈る、おなじみの表計算ソフト「エクセル」の本格ハウツーサイト。ただし、エクセルスキルを“普通に”は紹介しません。ビジュアルイメージに沿ったラブストーリーに織り込む形でエクセルテクニックを紹介しているのです。
第1話は「真由美の乗ったタクシーは、赤羽橋の交差点に~」からスタート……とてもエクセルのハウツーサイトとはとても思えない導入です。しかしこのあと、男性のデータをエクセルで管理するのが趣味の主人公・真由美を中心としたストーリーが、エクセルのノウハウとともにどんどん展開していきます。
「ストーリーを前面に出しすぎ」がユニーク
このコンテンツマーケティングがユニークなのは、本来“核”となるべき「エクセルのテクニック」を、敢えて“脇役”にしていること。ユーザーは、回を追うごとに加速していく「物語」を読みながら、その物語のキーポイントとして出てくるエクセルのノウハウを文字通り実際に「体験」しながら習得してくことができます。物語を読む楽しみと、実際にそこに登場するツールを体験する楽しみ、2つの楽しみをつくり、ユーザーのファン化を促しています。
現在は、「シーズン2」まで公開中。こちらはさらに面白い試みを行っています。「シーズン1」では物語を追体験するタイプの内容でしたが、「2」では謎解きのエッセンスも盛り込み、さらに物語を深く楽しめるようになっています。謎解きは、問題用ファイルをダウンロードして行うことができます。あとは実際に問題を解けば、次回更新時に正解を確認しながら物語の続きを一層楽しめる、というわけです。
2.超アイドル伝説・大森杏子
続いてご紹介するのは、2.5次元アイドル「大森杏子(おおもり・あんこ)」のプロジェクトです。プロジェクト、と紹介したのは一般的なコンテンツマーケティングの枠にとらわれない独特なプロモーションを展開しているから。ビジュアルだけ見ると、アニメやゲームのサイトのように見えますが、そうではありません。大森杏子が謳っているのは「2.5次元」。つまり、実際にタレント事務所に所属し、現実に仕事を請け負うキャラクターなのです。
企業とコラボしてバズらせる
一体どんなことをするかというと、一般企業やメーカーなどに対しては「商品コラボ」、カフェ・レストランなどの飲食店向けには「料理コラボ」、イベンターや代理店向けには「イベントコラボ」という形で、「大森杏子を売れっ子アイドルにする手助け」をします。それをきっかけに、SNSでのバズを拡大させていきます。言わば、企業が大森杏子というコンテンツの“インフルエンサー”となるわけです。
すでに企業とのコラボはどんどん進行しており、急速に知名度を拡大中との噂も……。ちなみにキャラクターのコラボ料金(使用料)は無料。ただし、コラボをするには事務所(?)の厳しい審査が必要な模様です。
「キャラクターの成長」そのものが“ストーリー”
このコンテンツマーケティング事例における「ストーリー」は、様々な捉え方ができます。例えば、「大森杏子は自称“至極の17歳”だけど実は……」というプロフィールや毒舌を売りにした性格設定をはじめ、Twitter、Facebookなどの「生きたメッセージ」もストーリーと捉えることができますし、「このプロジェクトで大森杏子が有名になっていく過程」そのものが壮大なストーリーであると捉えることもできます。
ユーザーは、言わばアイドルのファンという立ち位置であり、コラボした企業や商品は「大森杏子に会いに行く」ためのツールになるというわけです。今後の動きで気になるのはやはり「イベントコラボ」でしょうか。実際のファンの前にどうやって姿を現すのか……そのとき、3次元に限りなく近づくのかもしれません。こうしたワクワク感もファン化を促す一因と言えるでしょう。
ストーリーをどう組み込むかがカギ
前回のコラムでご紹介した事例も含め、自社のコンテンツマーケティングをユニークなものにして、なおかつ成功させるには、どのようにストーリーを組み込み、ユーザーに興味をもたせるかが非常に重要です。極端な話、この世に存在しうるすべてのものには、生まれてきた(開発された)背景があり、ストーリーがあります。それをどうやって「興味深いもの」として見せるか――それこそ、これからのコンテンツマーケターの腕の見せどころなのです。
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